ごあいさつ
「染・清流展」は、今回で第24回(32年)を迎えました。
1991年(平成3年)2月5日から10日まで、京都市美術館において、「第1回染・清流展」が開催されました。そのとき出品されたのは、染色美術の第一線で活躍する、重鎮から中堅までの日本の染色界を代表する30人の作家の先生方でした。会派を横断するオールキャストの染色展覧会は、それまで考えられない画期的なものとして注目されました。
この展覧会は、長い染織の歴史と伝統を持ち、現代的な染色美術も花開く、世界に冠たる「染色のまち・京都」から、染色芸術の素晴らしさを世界に発信しようと、木村重信先生(美術評論家、大阪大学名誉教授)と相談させていただきながら、1990年に清流会を創設し、当時、私が社長を務めておりました大松株式会社の長期にわたる社会的な文化事業と位置づけ、佐野猛夫先生をはじめ一流の染色作家の先生方に呼びかけて実現したものでした。
またそれをきっかけにして、優れた染色作品を収蔵し、展示する染色美術館を設立しようという意図もありました。それは、「染・清流館」が2006年(平成18年)に設立され、木村重信先生を初代館長に迎えて、実現することができました。
この間、染織界を取り巻く状況も厳しさを増しております。染・清流展が現在まで継続してこられたのも、出展された染色作家の先生方はもとより、支えて下さった多くの方のお蔭であると、心より感謝いたしております。
近年の染・清流展には、ベテラン、中堅の作家に加えて、新鋭の染色作家も出展しております。才能豊かな若い染色作家に参加していただくことで、染色美術界の将来を見据えたインキュベーター(培養器)の役割を、染・清流展及び染・清流館が果たしていくことができればとの思いを抱いております。
染色の世界を活性化するために、染・清流展が果たすべき役割はなお大きいと存じております。皆様のなお一層のご支援を念ずる次第です。
ごあいさつ
私は、今年1月に染・清流館館長に就任いたしました。
今回の第24回染・清流展は、私が館長として迎える初めての開催となります。
木村重信初代館長、加藤類子前館長のあとを受け継ぎ、館長としての責務を精一杯果たしてまいりたいと存じます。もとより、両先生とは、美術・工芸界における深い貢献と経験、さらに芸術に対する高い見識には遠く及ばない若輩であります。まことに僭越ではありますが、これから勉強を重ね知見を高めてまいりながら、全力で染色芸術の発展に尽くしてまいる所存です。
私は、大松株式会社社長として、呉服、宝飾、アパレル、テキスタイル業を営んでおります。生活の場での用としての染織も、そのデザイン性、また高い技法や美意識に裏打ちされた創作者の工夫が込められています。また伝統に根ざしながらも、現代の要望に即応した新しい創造性が求められます。そうした経験が、染・清流展に代表される染色芸術の振興や普及に少しでも役立つとするなら、それにすぐる歓びはありません。
染・清流展では、一流の染色作家の先生方が、独自の染色技法を駆使して制作された、芸術性の高い作品を一堂に展示されます。染色芸術は、日本が世界に誇るべき文化であると承知しております。染色文化の素晴らしさがより広い方々に認知されるように努めてまいりますのが、今回、染・清流館館長に就任した私の役割である存じております。
これから、染色作家の先生をはじめ、関係各位のご指導をいただきながら、精一杯、努力してまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。