ごあいさつ
木村 重信 (染・清流館 館長)
十数年前、神戸海星女子学院短期大学(私の妻が長年勤めていた)が廃校になり、それにともなって家政科の染織実技で用いられていた染色教材(蒸し器などの容器、刷毛、筆、伸子、染料など)が不用になりました。そこで幾つかの美術系大学に寄贈を申し出たところ、成安造形短期大学以外、要らないとのこと。理由は、それらを用いる伝統的染色技法で制作する学生が少なくなったからです。
このような気運はその後さらに強まり、最近は顔料、プリント、シルクスクリーン、デジタル方式のインクジェットなどを採用する若い染色作家が多くなりました。
しかし本展は「染・清流展」という名称が示すように、また美術館玄関に「SOMÉ」という大きな文字のある看板が掲げられていますように、これまでも、現在も「染め」に執着し、染料にこだわっています。そして古代のいわゆる三纈に由来する蝋染め、型染め、絞り染めなど、伝統的な技法を用いた作品を重視しています。
今回は本展への初出品者が8人と多いですが、上記の理由により、伝統的な染色技法を用いて制作している作家たちを選びました。染色を好み、染めの美を愛する人たちのうるわしい協同を期待します。
ごあいさつ
小澤 淳二 (大松株式会社会長)
第3回「染・清流展」(1993年、京都市美術館)図録に、私は次のように書きました。「私はこの催しを一企業の単なるメセナとは考えていません。むしろ長期にわたる社会的な文化事業と位置づけています。ですから、この展覧会に出展された作品の多くを、やがて設立する予定の『染色美術館』に収蔵し、多くの人たちに鑑賞していただくつもりです」。
そして2006年に「染・清流館」が開館し、それ以降「染・清流展」は隔年に本館で催されて、本展は4回目となります。
本年度の特色は、初出品者や2回目出品者が15人と多く、前期22人、後期21人の計43人のうち、3分の1を占めることです。しかも伝統的な従来の染色技法を用いて制作している作家が多いことは、うれしい限りです。また、自前の美術館での展示ですので、前期・後期とも比較的長期の23日間開くことができるのも喜ばしいです。
第19回「染・清流展」開催に際し、格別の御協力を得た作家諸氏に深謝し、染色を愛好する人たちの御支援をお願いします。