永き日のにはとり柵を越えにけり
芝不器男

互井 佳寿
句の解釈を 文字通り表面的に捉え 単純に表現した。まず躍動感のある作品にしたいと思いたち筆は、コシの強い 黒山馬の細身の筆を使用し 墨は、濃墨を使用し 用紙で柵のイメージに合う柄を選びましたが 今一つ線の複雑さが不足した。
60×60cm

吉引 ありさ
にわとりが柵を越えた。 そんなことが事件になるほど何もない春の一日。すこし靄掛かったおだやかな庭先で、餌をついばんでいたのか、何かの弾みでぽっと柵を越えてしまったにわとりを、必死で 追いかけるわけでもなく、にわとりも必死で逃げるわけでもない。 他にはこれといって何も起こらない、やるせなく長い春の一日が目に浮かんだ。
この句に流れる時間は永遠のようでもあるけれど、彗星に喩えられる夭折の俳人不器男の生きた時間を思うと、白昼夢のような儚い一瞬であったようにも思う。
麻/糊防染
110×72cm