花篝何もなかったかのように
鈴木明

近藤 紫鳳
「春のひだまりの中、ぼんやり櫻の花を眺めていると、先夜の宴のにぎわいが夢のように思われる」と句を解釈しました。
まず春の明るさ・ぬくもりの空間を先夜と区別する為、薄墨の円相で包み、左下半分に余白を充分とり、青空の爽やかさを表現。そして折り紙の櫻の花二輪にスポットをあて、春の日射しの明るさを、花弁の舞いに風のそよぎを試みました。金の額縁は、先夜の宴の華やかさの名残のつもりで使用しました。
60×60cm

大嶋 進
昔から単衣の季節に着用する無双と云う着物があります。
紗の生地を二枚、表と裏の色を変えて染上げ、それを重ねて仕立て上げる事によって、モアレが生じ、立体的に動きが表現されます。今回の作品は、その原理を利用し、激しく篝火のように燃え揺れる恋心を、何気なく・絵具では不可能な・染色でしか出来ない透明感のある微妙な表現を試みました。
この企画に声を掛けて頂き嬉しく感謝いたします。
絹(紗・紬)/蠟染、無双(紗合せ)
154×117cm