夕映えを戦死者回収隊よぎる


鈴木明
坂部 泰子

 

坂部 泰子

 

 

 「戦死者回収」このことばを目にした時、昨春、仙台から青森まで桜を訪ねて行く途中立ち寄った「八甲田山」。高い雪の回廊を通りながら、新田次郎の小説を思い浮かべた。そして、遠い日に父から南方で散華された人達の話を聞いた記憶が思い出されこの句に重ねた。この強い響きを放つことばを大きく漢字表現にして、厳しさや無念さを表わしたいと願い、かな表現で書いた部分は、愛おしく思う心を表現しようとこころみた。


 
60×60cm

石田 杜人

 

石田 杜人

 

 

  父は戦争で片腕を失った。御賜の義手があったが、付けているところは僕が幼い時に一回見たことはあるが、それ以外は見たことがない。戦場で片手を飛ばされた時は意識を失い仮死状態で、夜の休戦の時の回収隊に見つけてもらい命を拾われた。故に誕生日は二つあり、復活の日を通例にした。戦友が亡くなった話は臨場感を持って話すことが多かったが、時々、何かが過るように言葉をつまらせる。そして悔んだ。句の作者は僕の師である。その俳句から父を近くに引き寄せイメージが成立した。


木綿/蠟染
102×114.5cm