夏みかん酸っぱしいまさら純潔など
鈴木しづ子

廣田 蓬邨
夏みかんの甘ずっぱいさわやかさを表現しようと思った。そのためには明るい作品となるように中央に渇筆を取り入れ、後半は作者の強い意志が出せるように墨を多くした。また字形は、懐を広く取りながら少しとぼけた雰囲気を出したつもりである。
60×60cm

井上 由美
大らかな性愛を題材とし、賛否語り継がれた伝説の俳人鈴木しづ子。奔放でありながら、冷徹さも併せ持つ彼女の句が戦後の厳粛な俳壇に一石を投じ話題となった。
そのさなか、忽然と姿を消したしづ子。様々な憶測が囁かれ、結果的に彼女を伝説へとのし上げる事となった。
時を経て今残された彼女の一句から、私なりのしづ子像を垣間見たような気がしている。
〝いまさら純潔など〟
変わってしまった自分への嘆き、一方で精神だけは純潔でありたいという反意的誓い。
時代に翻弄され続けた女の悲哀、情念、清純性、彼女の句からそんなものを感じている。
絹/
蠟染、糊防染
200×113cm