わたしと生まれたことが秋ふかうなるわたし


種田山頭火
古谷 好啓

 

古谷 好啓

 

 

 元来旅が好きだった山頭火は常に母の位牌を風呂敷に包んで持ち歩いていたと云う。少年期に理不尽に失った母の死(自殺)の喪失感や深い苦しみとともに生き続けたのだろう。このどろどろとした憂いの気持ちを表現するために紙は墨流しで淡墨とした。マットは秋の「深まり」と「不幸」を重ねている事から秋色っぽくし季節の移ろいを表現する為に二色とした。そして山頭火の気持ちを切りさく為に斜めに筋を入れた。


60×60cm

栗原 知枝

 

栗原 知枝

 

 

 私には写生で在ろうと、無かろうと、一瞬の時間・空間を切り取った場面であり、俳句は最も説明なき私的と思える。文字の連らなりを考えると説明で絵解きに、只、其処に本当は無い気がする。
句を選んだ瞬間、私の中で切り取られた世界から、説明や言い訳を切り捨てた時、私にとってのこの句が現れた。
 山頭火と肌とは厚かましい、息が触れる、否、せめて足音が聴こえる場所に、佇めていたら…と思える。


麻/蠟染
160×108cm