しら梅の泥を破りて咲きにけり


照井翠
平川 紅舟

 

平川 紅舟

 

 

 今咲いた一輪の白梅。寒さに耐えた蕾が開くとき、宇宙をも包み込みそうな内に秘めた強さ、それでいて、どこか、そこに可憐で、いとおしい梅の花に思いを寄せ、作品作りに取り組んだ。
 左側に黒を配し、つきぬけたその先にある白の空間にさわやかな線をもって構成した。黒から白に動きがあればとの思いから、パネルの形に工夫を加え、見る人が移動することによって生まれる効果が得られるのではないかと考えた。


60×60cm

倉内 啓

 

倉内  啓

 

 

 東日本の大震災から三年経ちますが、私はいままでこの悲しみを正面から対峙する事に躊躇し、どちらかと言うと避けて来た様に思います。これまで見て来た数々のメディア画像があまりにも痛ましく、現実的なものとしては到底受け入れる事が出来なかったからです。しかしながら、この句集(照井翠『龍宮』)に遭遇し確かなリアリティーを突きつけられました。哀しきに何らかの意志を示す事が、今を生かされている表現者としての責務だと感じました。


麻紙、墨、顔料、銀箔/型染(糊防染技法)
204×124cm