ごあいさつ
第23 回「染・清流展 ビエンナーレ2021」を開催します。
「染・清流展」は第一線で活躍する染色作家に、所属団体の枠をこえて秀作を出品してもらい、染色文化のすばらしさを広く観覧者に伝えるとともに、染色界の活性化をも目指す展覧会です。1991年に第1回を開き、今年は30周年の節目です。2005年まで15回は京都市美術館で毎年、2007年からは前年に開館した染・清流館で隔年に開催してきました。
当初は大型のパネル作品が主でしたが、今回はパネル形式のほか屏風や額装、タペストリー、染帯など多様な作品が並びます。作家それぞれが表現に凝らした意匠や技法の巧みさ、モチーフへ向けたまなざしの個性を、存分にお楽しみください。
出品作家は、外部の美術館関係者やマスコミ関係者を含む選考委員が当初34名を選びました。体調不良やコロナ禍のためアトリエが使えなくなったなどの理由により辞退者が出て、27名が最新作を寄せます。感染症の大流行により世界が動揺を続けるなかで今展のため制作に取り組まれた作家の皆さまに、心より御礼申し上げます。
染・清流館
ごあいさつ
「染・清流展」は、今回の開催で30周年を迎えました。
1991年(平成3年)2月5日から10日まで、京都市美術館において、「第1回染・清流展」が開催されました。そのとき出品されたのは、染色美術の第一線で活躍する、重鎮から中堅までの日本の染色界を代表する30人の作家の先生方でした。日展(現代工芸・新工芸)、新制作、モダンアート、伝統工芸、新匠工芸会、無所属など、会派を横断するオールキャストの染色展覧会は、それまで考えられない画期的なものとして注目されました。
この展覧会は、長い染織の歴史と伝統を持ち、現代的な染色美術も花開く、世界に冠たる「染色のまち・京都」から、染色芸術の素晴らしさを世界に発信しようと、木村重信先生(美術評論家、大阪大学名誉教授)と相談させていただきながら、1990年に清流会を創設し、当時、私が社長を務めておりました大松株式会社の長期にわたる社会的な文化事業と位置づけ、佐野猛夫先生をはじめ一流の染色作家の先生方に呼びかけて実現したものでした。
またそれをきっかけにして、優れた染色作品を収蔵し、展示する染色美術館を設立しようという意図もありました。それは、約100名の染色作家の500点を優に超えるコレクションを擁する染色美術館「染・清流館」が2006年(平成18年)に設立され、木村重信先生を初代館長に迎えて、実現することができました。
染・清流展が開催されてきたこの30年の間、染織界を取り巻く状況も厳しさを増し、ITF(国際テキスタイル・フェア)コンペをはじめ、多くの染織関連の展覧会が幕を閉じていきました。この展覧会が現在まで 継続してこられたのも、出展された染色作家の先生方はもとより、支えて下さった多くの方のお蔭であると、心より感謝いたしております。
近年の染・清流展には、ベテラン、中堅の作家に加えて、新鋭の染色作家も出展しております。才能豊かな若い染色作家に参加していただくことで、染色美術界の将来を見据えたインキュベーター(培養器)の役割を、染・清流展及び染・清流館が果たしていくことができればとの思いを抱いております。
染色の世界を活性化するために、染・清流展が果たすべき役割はなお大きいと存じます。そのための展覧会の在り方も現状にとらわれることなく模索していきたいと存じております。皆様のなお一層のご支援を念ずる次第です。