ごあいさつ
木村 重信 (染・清流館 館長)
京都が世界に誇り得る美術工芸に、染色、日本画、現代陶芸、ペーパー・アート、漆芸などがあります。現代陶芸は「走泥社」の革命以来、京都が世界をリードしています。和紙や漆器の生産は京都以外の地方で盛んですが、和紙による新しい立体造形を追求し、漆芸作品の芸術性を高めたのは、京都です。日本画は伝統的に京都が中心であります。
特に染色は、伝統の友禅染めなどから新しい創作染色まで、質・量ともに世界に冠絶しています。すなわち、﨟纈、纈、纐纈のいわゆる3纈に始まり、辻が花や友禅染めを加え、小合友之助・稲垣稔次郎両氏を先達とする創作染色を経て、多様な新しい技法を駆使する現代染色に至りました。このような現代染色芸術の発展に、「染・清流展」がかなり貢献してきたのではないかと思います。その「染・清流展」が今年、第20回の節目をむかえます。長年、ご協力たまわった出品作家諸氏に深く謝意を表するとともに、この20年間に亡くなられた多くのすぐれた作家諸氏を悼み、ご冥福をお祈りします。
ごあいさつ
小澤 淳二 (清流会 会長)
7月に米国の観光雑誌「トラベル・アンド・レジャー」が発表した、2015年の世界の観光都市ランキングで、京都市が2年連続の1位になりました。かつて京都市がフィレンツェ(イタリア)と姉妹都市協定を結んだとき、世界都市の仲間入りをしたと喜びましたが、今やそのフィレンツェ(4位)を抜いての1位です。
「トラベル・アンド・レジャー」誌のアンケート項目は風景、文化、芸術、食物など6つですが、染色も当然関係していると思われます。外国人観光客は舞妓や「都をどり」などを見て着物の美しさに感嘆し、道行く浴衣姿の男女の清楚さに打たれます。そのことが景観保存に長年努力してきた伝統的風景と融合します。また、日本手拭などの雑貨の染色デザインのすばらしさもあります。
このようにすぐれた京都の染色をリードするのは、創作染色作家たちであります。そしてこれらの作家たちの作品(主としてパネル)を展示する「染・清流展」は今回20周年をむかえました。十年一昔といいますが、いささか感慨をもよおします。ひとえに出品作家諸氏のご協力と愛好家のご支援の賜であります。ここに深く謝意を表し、引き続き変わらぬご鞭撻をお願いする次第です。