小林祥晃さんを偲んで
森野 泰明 (日本芸術院会員)
小林祥晃さんは自分の作品について「自然をテーマとして作品を制作し続け、自然の焜くような美しさ、迫り来るような響、力強さに大きな感動を憶え、日々制作に取り組んでいる」と。
一九五五年、小林尚珉氏の三男として生を受け、父は金工家で兄たちはそれぞれ、金工、陶芸家として活動する工芸一家である。
大学進学は大阪芸術大学の工芸科に入学したが、染織の世界に強くひかれ、二回生から染色を専攻、染色家小林祥晃氏の誕生である。彼は常に風をモチーフにして、自然の微妙な変化の中に美しさを求め、又、空間に存在する生命を心象風景として表現してきた。
小林さんのまなざしは常に自然の変化の姿を染色の伝統的技法を用いながら、作品の中に彼の感性と心情が豊かにうたいあげられている。
今、思い返してみると彼と出会って数十年。食べること、魚釣りが好きであった小林祥晃さんは若くして、もうこの世にいない。
ここに祥晃さんの人と彼の作品を偲びたいと思います。