伝統音楽の魅力を探る・レクチャーコンサート Vol.10

狂言歌謡はおもしろい

室町時代歌謡がに
〜狂言のもうひとつの魅力〜
2014(平成26)年11月18日(火)

 「能楽」という言葉があります。能と狂言とを合わせた呼び名です。実はこの言葉は明治になって出来た用語です。それまでは、二つをひっくるめて「能」と言っていました。もちろん、能が主で、狂言が従です。
 もともと古くは、今日の能と狂言とは同じ芸能で、猿楽とよばれていました。その中で歌と舞に重点をおいて、古典的な題材や人物の登場する悲劇的な内容を追求していったのが「能楽」です。それに対して、同世代の社会や人物の生活を題材に、セリフとシグサを中心に喜劇的な劇を作ろうとしたのが「狂言」です。二つはその特色を強調するようになってくると、だんだん別の芸能のようになってきました。
 しかし長い間(今日でも)同じ能舞台で同時に交互に上演するといった出演方式をとっています。能を時代物とすれば、狂言は世話物ですが、狂言も多分の能の影響をうけています。狂言の中には歌や舞を取り入れた演目が沢山あります。ただその歌舞が、同時代の、つまり室町時代に世間で流行ったものを取り入れています。俗に「室町歌謡」といわれるものです。
 今回は、いつもの滑稽な寸劇としての狂言とは一寸ちがった、室町時代の姿を色こくのこした「狂言歌謡」の魅力と新しさをご紹介したいと思います。

権藤芳一 (演劇評論家)