伝統音楽の魅力を探る・レクチャーコンサート Vol.7

箏曲はおもしろい

2011(平成23)年10月5日(水)

 箏曲(そうきょく)は、箏(こと)を中心に演奏する音楽です。箏は三味線と並んでよく知られていますが、三味線に比べて遙かに古い歴史を持っています。
 日本には、すでに『古事記』の時代から小さなコトがあり、高位の男性の持ち物でしたが、今の箏は、その後、奈良時代に唐の宮廷からもたらされた大型の13弦の箏がその母胎で、平安時代には貴族や寺院の僧侶たちに愛用されました。今もその形状に大差はありません。
 今の箏は、17世紀中ごろに平家琵琶や、漸く普及し始めた三味線の名人だった八橋検校(けんぎょう)(1614-85)が、ふとした切っ掛けで寺院箏曲から発展した筑紫箏(つくしごと)を習い、それを基礎にして創始した音楽です。それは独奏で弾き歌いをする「組歌」と、歌のない「段物」でした。
 今回は、王朝時代の優雅な面影を残す箏曲の歴史を辿りながら、それぞれの魅力に迫りたいと思います。
 先ずは箏曲の原点である「段物」から、お馴染みの《六段の調》をお聞き頂き、次いで「組歌」と「段物」を合体させた幕末の名曲《秋風の曲》を取り上げます。続いては、明治になって箏曲の原点立ち返って、そこに新しい詩を乗せて歌う珍しい「京極流箏曲」から《厳島詣》を、そして、三味線での語り物である浄瑠璃を箏曲に導入した「山田流箏曲」から《須磨の嵐》をお聞き頂きます。
 休憩の後は、箏曲界に旋風を巻き起こし、現代邦楽の誕生を促した宮城道雄の作品から器楽曲《ロンドンの夜の雨》と歌曲《秋の流れ》を、そして、この宮城が開発した17弦箏による独奏で、古典曲を現代に蘇らせて変容させた広瀬量平の《みだれによる変容》、最後は最先端の多弦箏・25弦による伊福部昭の《琵琶行》を取り上げます。

久保田 敏子(くぼた さとこ)
相愛女子大学音楽学部作曲学科卒。同研究科音楽学専攻修了。
龍谷大、奈良教育大、京都市立芸術大同日本伝統音楽研究センター教授を経て、現在同所長