伝統音楽の魅力を探る・レクチャーコンサート Vol.4
“歌舞伎のオーケストラ”下座音楽の魅力を探る
歌舞伎の下座音楽はおもしろい
2008(平成20)年8月19日(火)
●下座音楽
歌舞伎はその発生時から音楽劇としての性格が強く、音楽はなくてはならない存在でした。現在の歌舞伎舞台において、もしも下座音楽がなければと、改めて考えてみると分かります。ところが、下座音楽は、通常舞台の裏側で演奏されているため、観客である私たちはあまりその存在に気づいていないことが多いようです。
下座音楽は、歌舞伎の発生時には、能と同じく、舞台の奥に座って演奏していましたが、次第に演劇として複雑化して、目立たない位置に移るようになりました。最初は、能楽と同じく四拍子(笛・鼓・太鼓)のみでしたが、三味線が入り、歌舞伎音楽として成立します。その後、舞台の上手に陣取っていたものが、幕末期に下手に移動して現在の「黒御簾」内での演奏になりました。そのため、歌舞伎の音楽を「下座」「黒御簾」などとも呼び、演奏者を「囃子方」「お囃子」ともいいます。舞踊の演目の時に舞台奥の雛壇に座り「出語り」「出囃子」で演奏する以外は、黒御簾の中で観客には見えない場所で演奏するので、「陰囃子」の呼称もあります。
下座音楽には、「唄」「三味線」「鳴物」の職分があり、この三者が提携して、幕明き、人物の登退場、台詞や立回り、場面転換や幕切れの他、特殊な場面にも重要な音楽的効果を演出します。現行曲は、800曲を越えると言われており、その用法は、極めて複雑で、江戸と上方でも、その内容が異なります。
今回のレクチャーコンサートでは、あまり意識されることのないものではありながら、歌舞伎の舞台に不可欠の下座音楽にスポットを当て、その魅力について掘下げて行きます。特にその舞台効果を探るため、実際の舞台映像と絡めつつ、できるだけわかりやすく鑑賞していきたいと思います。