伝統音楽の魅力を探る・レクチャーコンサート Vol.6

常磐津節はおもしろい

2010(平成22)年12月15日(水)

 常磐津節は、江戸歌舞伎とともに発展してきた浄瑠璃(三味線音楽)の流派のひとつです。
 その特徴は、京都と江戸、両方の気風を取り込んでいることです。京都に生まれ、京都の浄瑠璃を身に付けた宮古路文字太夫が江戸にくだり、1747年(延享4)に「常磐津」という新しい名を江戸中村座に掲げたのが、その始まりです。18世紀初期に京阪で流行していた、情緒豊かな宮古路豊後掾の浄瑠璃をベースに、江戸風の豪放さと軽妙さが、文字太夫代々の独自の工夫で加味されてきました。こうした音楽表現の幅広さと柔軟性が、役者・作者・観客に喜ばれて、歌舞伎舞踊には欠かせない音楽となりました。
 「所作事」とも呼ばれる歌舞伎舞踊は、人気役者によって新作が競って演じられ、老若男女とわず関心の的でした。それに相応しい音楽を作曲、演奏することが、常磐津連中の重要な仕事でした。そうした浄瑠璃や三味線を、繰り返し独り占めしたい、自分で演じてみたいと思うのは、今も変わらぬ人情といえましょう(携帯プレーヤー、カラオケ、ギターなど)。常磐津の稽古では、初演時に伴奏として演奏された浄瑠璃と三味線だけでなく、役者が語ったセリフも稽古してもらえる、このことが独自の魅力であり伝統でした。
 こうした常磐津節のおもしろさを、人間国宝 常磐津一巴太夫師の貴重な芸談と、第一線で活躍されている常磐津都㐂蔵氏ほかの実演で味わっていただきます。また、幕末の三味線弾きが著した「秘伝の書」をひもときながら、常磐津の構造や旋律の特色を探ります。